生物科学セミナー
第1569回生物科学セミナー『植物の凍結耐性と脱水耐性:細胞壁・糖・タンパク質が支える環境適応』
| 日時: | 2026年12月16日(水) 16:50-18:35 |
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| 場所: | 理学部2号館223号室及びZoom |
| 演者: | 高橋 大輔 准教授(埼玉大学大学院理工学研究科) |
| 演題: | 植物の凍結耐性と脱水耐性:細胞壁・糖・タンパク質が支える環境適応 |
| 主催: | |
| 共催: | |
| 後援: |
要旨
植物は低温にさらされると、低温馴化と呼ばれる過程を経て凍結耐性を高める。この過程では、糖の蓄積や遺伝子発現の変化に加えて、生長速度や代謝、細胞・組織構造にも大きな変化が生じる。冬季栽培野菜で利用される「寒締め」も、こうした低温応答を利用した身近な例である。本セミナーでは、植物が低温環境に応答し凍結に備える仕組みについて、低温馴化と脱馴化に伴う生理的変化を中心に紹介する。
植物組織が凍結すると、多くの場合、氷は細胞内ではなく細胞外に形成される。そのため、凍結耐性には低温応答だけでなく、細胞外での氷形成や、それに伴う細胞脱水への対応が重要となる。我々はこれまで、氷形成の場となる細胞外空間を構成する細胞壁に着目し、低温馴化・脱馴化に伴う細胞壁多糖の動的変化を解析してきた。特に、ペクチン側鎖β-1,4-ガラクタンに着目し、その変化と細胞壁物性、生長、凍結耐性との関係から、低温適応における細胞壁改変の役割を明らかにしてきた。
一方で、凍結に伴う細胞脱水は乾燥ストレスとも共通する側面を持つ。糖の蓄積やLEAタンパク質をはじめとする天然変性タンパク質は、凍結耐性および乾燥耐性において重要な役割を担うと考えられているが、その共通性や多様性については未解明な点が多い。そこで最近は、凍結耐性植物に加えて極度の乾燥に耐える植物やその他の生物にも対象を広げ、糖や天然変性タンパク質による細胞保護機構について研究を進めている。本セミナーでは、細胞壁研究から乾燥耐性研究への展開を紹介し、凍結と乾燥という異なる環境ストレスに対して生物がどのように細胞を保護しているのかを考える。
参考文献
Kutsuno T et al., Temporal cell wall changes during cold acclimation and deacclimation and their potential involvement in freezing tolerance and growth, Physiol. Plant. (2023).
Takahashi D et al., Structural changes in cell wall pectic polymers contribute to freezing tolerance induced by cold acclimation in plants, Curr. Biol. (2024).
Shikata H et al., Memory in the wall: expanding our understanding of the roles of plant cell walls, New Phytol. (2026).
担当
東京大学大学院理学系研究科・生物科学専攻・発生進化研究室
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