生物科学セミナー
第1571回生物科学セミナー『細胞膜における物質の非対称性分布の構築とその変化による適応』
| 日時: | 2026年9月11日(金) 16:50-18:35 |
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| 場所: | 理学部2号館223号室およびzoom |
| 演者: | 鈴木 淳 教授(京都大学高等研究院 iCeMS/生命科学研究科) |
| 演題: | 細胞膜における物質の非対称性分布の構築とその変化による適応 |
| 主催: | |
| 共催: | |
| 後援: |
要旨
細胞はエネルギーを用いて物質の非対称分布を構築し、それを瞬時に変化させることで、細胞内外の環境変化や状態変化に柔軟に適応している。例えば、ナトリウムイオンやカルシウムイオンはイオンポンプによって細胞外へ排出され、環境変化が起きた際には、これらのイオンがイオンチャネルを介して細胞内へ流入することで細胞は活性化する。この仕組みは、神経細胞や免疫細胞など様々な細胞の活性化に用いられている。これまで、イオン輸送の仕組みについては、イオンポンプやイオンチャネルの同定とともに世界中で研究が進められてきた。一方、細胞はイオン以外にも、細胞膜を構成する脂質二重膜において、脂質の非対称分布を構築している。そして、細胞内外の状態が変化した際には、この脂質非対称性を速やかに変化させて適応する戦略をとっている。この過程では、細胞膜内側の脂質が外側に露出するだけでなく、細胞膜外側の脂質が細胞内へ取り込まれることから、「脂質スクランブル」と呼ばれている。しかしながら、イオン輸送と比較して脂質輸送の仕組み、特に脂質スクランブルのメカニズムについては、1980年代初頭からその存在が示唆されていたにもかかわらず、ほとんど分かっていなかった。我々は、種々の網羅的スクリーニングを駆使して、世界で初めて脂質スクランブルを司るタンパク質であるスクランブラーゼを同定し、その分子メカニズムを明らかにしてきた。本セミナーでは、生物が脂質スクランブルをどのように用いて環境に適応しているのか、その本質について議論すると共に、その原理を応用した生体内における不要細胞の除去法についても紹介する。
参考文献
1. Yamato and Suzuki, Nature Biomedical Engineering (2025)
2. Niu et al., Nature Communications (2024)
3. Noguchi et al., Cell Genomics (2024)
4. Zhang et al., Nature Communications (2023)
5. Maruoka et al., Molecular Cell (2021)
6. Suzuki et al., PNAS (2016)
7. Suzuki et al., Science (2013)
8. Suzuki et al., Nature (2010)
担当
東京大学大学院理学系研究科・生物科学専攻・脳機能学研究室
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