東京大学大学院理学系研究科 生物科学専攻

Department of Biological Sciences
Graduate School of Science
The University of Tokyo

内部情報 第1570回生物科学セミナー『野生イネに潜む多階層の利己性と繁殖戦略進化』

生物科学セミナー

第1570回生物科学セミナー『野生イネに潜む多階層の利己性と繁殖戦略進化』

日時: 2026年9月8日(火) 16:50-18:35
場所: 理学部2号館223号室およびzoom
演者: 津田 勝利 准教授(明治大学農学研究科)
演題: 野生イネに潜む多階層の利己性と繁殖戦略進化
主催:
共催:
後援:

要旨

多様な環境に生きる野生植物では、限られた資源をどのように配分するかという「資源分配」が、繁殖の成否を大きく左右する。野生イネでは、種子繁殖・自殖型から栄養繁殖・他殖型まで連続的な繁殖戦略のスペクトラムが存在するが、その多様性を生み出す分子基盤は未開拓である。我々は、野生イネ Oryza rufipogon において、穂分枝を強力に抑制する Uniaxial (Ux) と、その作用を打ち消して分枝を促進する Suppressor of Ux (Su) からなる新規制御モジュールを見出した。Ux は DNA 型トランスポゾン(TE)にコードされる機能未知の核タンパク質であり、栄養繁殖性・他殖性の野生イネに偏って分布することから、本来の転移活性とは異なる穂分枝抑制機能を獲得した TE タンパク質の外適応の一例と考えられる。一方、Su はイネ科で著しくコピー数を増加させた F-box タンパク質ファミリーの一員であり、TE をタンパク質レベルで制御する宿主システムの一端を担う可能性が示された。さらに解析を進めた結果、Ux 遺伝子座近傍には自身の花粉伝達率を著しく高める因子が存在することも明らかとなった。すなわち、自身の伝達率を高めようとする配偶子、その繁殖戦略に便乗しようとするTE、さらにそれらを飼い慣らそうとする宿主システムという、異なる階層の利己性が交錯している可能性が示唆された。本セミナーでは、これらの知見を紹介するとともに、その進化的意義について議論したい。
 

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