生物科学セミナー
第1576回生物科学セミナー『動物ボディプランにおける対称性とその破れ』
| 日時: | 2026年6月8日(月) 16:00-17:30 |
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| 場所: | zoom |
| 演者: | 川口喬吾(理化学研究所 開拓研究所 / 東京大学 知の物理学研究センター) |
| 演題: | 動物ボディプランにおける対称性とその破れ |
| 主催: | |
| 共催: | |
| 後援: |
要旨
生物は分子レベルで左右対称性が破れており、すなわちキラルである。それにもかかわらず、多くの動物の体は左右対称に組み立てられ、その上にキラリティが制御されたかたちで重ねられている。本講演ではこの二層構造の謎について、臓器組織と動物の進化という二つの角度から議論してみたい。
前半では、細胞集団や臓器組織にあらわれる液晶的な秩序、すなわちネマチック構造についてみていく。2次元のみならず3次元組織においてもネマチックな配向場が見られ、その中にトポロジカル欠陥と呼ばれる幾何学的構造が同定できることを示す。さらに、3次元組織においてねじれた構造、つまりキラリティをもつ構造が機能を担っているらしい例を紹介する[1]。これらの例から、動物の中のキラリティには大域的なものと細胞レベルのものがあり、両者の整合性が組織の機能を支えていることが見えてくる。
後半では、左右対称性そのものの起源を物理的な観点から問う。運動する動物のほぼすべては左右相称動物であり、対称性と運動の間には何らかの関係があると考えられる。そこで、いわゆる低レイノルズ数における遊泳のモデルを出発点とし、泳ぎの対称性が速度や効率にどのように影響するかを見た最近の研究を紹介する[2]。この解析から、左右対称な体が自然に生み出す対称・反対称な動かし方は効率の点で互いに等価であり、かつあらゆる泳ぎ方の中で最も効率がよいことが分かった。こうした最適性は左右対称な体でなければ実現できないため、運動する動物が左右相称な体型に収束したことには物理的な根拠がある可能性が浮上してくる。
参考文献
[1] “Topological defects and coherent myocardial chirality shape torsional heart contraction”, Naofumi Kawahira+, Takaki Yamamoto+, Takumi Washio, Yoshiro Nakajima, Kenta Yashiro, Vincent Xu, Kyogo Kawaguchi*, Atsushi Nakano*, bioRxiv 2026.04.13.718243
[2] “Hydrodynamic origins of symmetric swimming strategies”, Takahiro Kanazawa*, Kenta Ishimoto*, Kyogo Kawaguchi*, arXiv:2603.08444
担当
東京大学大学院理学系研究科・生物科学専攻・医科学数理研究室
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