東京大学大学院理学系研究科 生物科学専攻

Department of Biological Sciences
Graduate School of Science
The University of Tokyo

内部情報 【5/14】第1518回生物科学セミナー『フロリゲンを介した花成制御の仕組み』

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【5/14】第1518回生物科学セミナー『フロリゲンを介した花成制御の仕組み』

2025.04.02

日時:5月14日(水) 16:50-18:35
場所:理学部2号館223号室
演者:阿部光知 教授(演者所属)総合文化研究科広域科学専攻
演題:フロリゲンを介した花成制御の仕組み

要旨

 植物は、自らを取りまく複雑かつ多様な環境要因の変動に対して巧みに応答し、成長や繁殖の最適化を達成している。花成時期の決定を例にとれば、日長はもちろんのこと、光質、生育温度、乾燥や植物ホルモンといった様々な外的・内的環境要因が花成時期の決定に関与する。葉で感知、統合された環境情報は、茎頂へと伝達され、発生プログラムの変更によって花芽形成が開始されるが、こうした調和のとれた環境応答を現実のものとするためには、各種制御階層における情報の交換や統合が必須である。
 花成ホルモン・フロリゲンは、葉でおこる「環境情報の受容」と茎頂でおこる「花メリステムの形成」の二つのイベントをつなぐ長距離性のシグナル分子である。シロイヌナズナにおいてはFLOWERING LOCUS T(FT)タンパク質がその分子実体であることが広く知られている。葉の篩部伴細胞で産生されたFTタンパク質は、篩管を介して茎頂まで輸送され、bZIP型転写因子FDタンパク質と複合体を形成し、花芽形成を開始する。フロリゲンの分子実体が明らかにされ、葉における「産生」および茎頂における「受容」の理解が進む現在、FTの「輸送」制御の理解が求められている。
 我々は、独自のin vivo可視化手法を用いて、シロイヌナズナ茎頂メリステムにおけるFT-FD複合体の可視化に成功した。このin vivo可視化手法を用いることによって、茎頂メリステム内のFT-FD複合体形成領域、FTの輸送制御、成長相転換に伴うFT-FD複合体の動態変化の実態が見えてきた。本セミナーでは、FT-FD複合体の可視化によって明らかになりつつあるフロリゲン輸送制御について、最近の知見を報告する。

参考文献

  1. Abe M, et al. (2005) FD, a bZIP protein mediating signals from the floral pathway integrator FT at the shoot apex. Science 309: 1052-1056.
  2. Abe M, et al. (2019) Transient activity of the florigen complex is required for normal reproductive development. Development 146: dev171504.

担当

東京大学大学院理学系研究科・生物科学専攻・植物生理学研究室