第1495回生物科学セミナー

生物の電気信号が生まれる仕組み ~What, How and Why?

岡村 康司 教授(大阪大学大学院医学系研究科)

2024年12月04日(水)    16:50-18:35  理学部2号館223号室及びZoom   

生体において電気シグナルは、神経系、筋収縮、分泌などに広く重要な働きを果たしており、その分子機構とその異常による病態の理解、治療方法の開発は、長い間生理科学の重要なテーマの一つであり、現在も理解が大きく進みつつある。これらは、一足飛びでヒトを対象として理解がなされたのではなく、ゾウリムシからの静止膜電位の計測、ヤリイカからの活動電位の計測、フジツボの筋からの計測、電気ウナギの電気器官からのタンパク質精製、動きがおかしいショウジョウバエの観察、カエルの卵を分子工場として用いた実験、ホヤゲノムからの相同性遺伝子の探索など、多くの生物種を対象としての試行錯誤を経て生み出されてきた。
本セミナーでは、研究の背景をのべつつ、演者らの見出した電位センサータンパク質である電位感受性ホスファターゼやプロトンチャネルなどの分子機構や生理機能を解説し、最近の動向や今後の発展を議論したい。

参考文献
Murata Y, Iwasaki H, Sasaki M, Inaba K, *Okamura Y (2005) Phosphoinositide phosphatase activity coupled to an intrinsic voltage sensor. Nature, 435:1239-1243.
岡村康司 (2005)「イオンチャネル遺伝子から見た生理機能の進化」,海洋,41,61-70
Sasaki M, Takagi M, *Okamura Y (2006) A voltage sensor-domain protein is a voltage-gated proton channel, Science, 312(5773), 589-92.
岡村康司 (2024) 電位依存性ホスホイノシチドホスファターゼVSP:発見から約20年を経て 生化学 96巻2号 255-268.

担当: 東京大学大学院理学系研究科・生物科学専攻・附属臨海実験所