第1490回生物科学セミナー
細胞表面受容体による植物免疫システムの進化軌跡
白須 賢 グループディレクター(理化学研究所環境資源科学研究センター)
2024年10月02日(水) 16:50-18:35 理学部2号館223号室及びZoom
植物は自らの周りに存在する生命体をどこまで“見えている”だろうか. 光合成をおこなう植物はそれ以外の生命体の炭素源であることから, ありとあらゆる生命体から”攻撃”を受けるはずであり, その認識は植物の生存戦略に大きく関わってくる. また, 植物が陸上に進出して以来, 周りに存在する生命体は劇的に変わったはずであり, その認識および反応機構も大幅に進化したはずである. では, 陸上植物は, どのような生命体をどのようにして認識しているのだろうか. 外部生命体の認識は主に細胞表面の受容体タンパク質によっておこなわれていると考えるのが真核生物における自然免疫システムの根本であり, 植物も例外ではない. 病原体由来の物質である病原体関連分子パターン(Pathogen-Associated Molecular Pattern, PAMP)は, 植物の細胞表面パターン認識受容体(Pattern Recognition Receptor, PRR)によって認識される. このようなPAMPを認識しPRRによって引き起こされる免疫(Pattern-Triggered Immunity, あるいはPRR-Triggered Immunity, PTI)は, 動物, 植物, 菌類, その他の真核生物に保存されている. 本セミナーでは,植物におけるPTI免疫システムに関係する因子とその進化的な軌跡を考察する.また、本研究室において最近同定された線虫の新規PAMPとその認識に必要なシロイヌナズナのPRRも紹介したい。
参考文献 Ngou, B.P.M., Wyler, M., Schmid, M. W., Kadota, Y, Shirasu, K. Evolutionary trajectory of pattern recognition receptors in plants. (2024) Nature Comm. 15: 308.
担当: 東京大学大学院理学系研究科・生物科学専攻・遺伝学研究室