濡木研公開ラボセミナー

共生と生物進化

深津 武馬(国立研究開発法人産業技術総合研究所 生物プロセス研究部門 生物共生進化機構研究グループ 首席研究員)

2024年08月05日(月)    15:00-16:30  理学部1号館中央棟341号室   

自然界において、生物というのは周囲の物理的な環境はもちろんのこと、他のさまざまな生物とも密接なかかわりをもってくらしています。すなわち、個々の生物というのは生態系の一部を構成していると同時に、体内に存在する多様な生物群集を含めると、個々の生物それ自体が1つの生態系を構築しているという見方もできるのです。
大部分の生物が、恒常的もしくは半恒常的に微生物を体内に保有しています。このような現象を「内部共生」といいますが、きわめて高度な相互作用や依存関係がみられ、しばしば新しい生物機能の創出を伴います。共生微生物と宿主生物がほとんど一体化して、あたかも1つの生物のような複合体を構築する場合も少なくありません。
共生関係からどのような新しい生物機能や現象があらわれるのか?共生することにより,いかにして異なる生物のゲノムや機能が統合されて1つの生命システムを構築するまでに至るのか?共に生きることの意義と代償とはなにか?個と個、自己と非自己が融け合うときになにが起こるのか?
本講演では特に昆虫類の適応進化と内部共生の関わりについて、その多様性、相互作用の本質、進化的な意義、応用利用への展開の可能性など、基本的な概念から最新の知見まで、私たちの研究成果を中心に紹介します。

担当:東京大学大学院理学系研究科・生物科学専攻・濡木 理

※学内限定