人類学演習・談話会
農耕以前の巨石建造物をめぐる考古学:南東トルコの先土器新石器時代
下釜 和也 先生(千葉工業大学 地球学研究センター)
2024年06月28日(金) 16:50-18:35 理学部2号館201号室
西アジア初期新石器時代における農耕牧畜の成立過程は、かつて信じられていたような「革命」的な短期間の過程ではなく、人間の文化・社会的変化、人間と動植物の関係、古環境変化が相互にかかわる複雑で長期的な過程であったことが明らかになってきました。その一方で、この時代は、巨大な石柱をもった特殊な建造物の築造とそれに伴う宗教的シンボリズムや儀礼行動が顕著に発達した時代でした。そうした巨石建造物が出現する人類史的背景として、社会階層が高度に発達した農耕社会の存在がこれまでは前提とみなされてきました。しかし、初期新石器時代の巨石建造物をつくった担い手が、どうやら農耕成立以前の狩猟採集民社会であったことが近年得られた考古学的証拠から指摘されています。彼らが定住的な複雑狩猟採集民であったのか、個々の考古学的現象がどのようなきっかけで始まったのか、いわゆる「新石器化」過程とどのような関係にあったのか、その前後の先史文化との連続性など、未解明の考古学的課題が数多く残されています。それらを包括的に、また十分に説明できるモデルもまだ提起されていません。
この講演では、南東トルコで最近みつかった考古学的事例を紹介しながら、技術や儀礼、定住性、集団規模などをキーワードに特殊な巨石建造物がつくられた背景を探るとともに、千葉工業大学と東京大学を中心にして進めている現地調査の成果についてその一端を紹介します。
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<今後の予定>
7月 5日 箭内 匡 先生(井原)
12日 森田 航 先生
19日 西村 瑠佳 先生(太田) ※今期最終回