人類学演習・談話会

『響応する身体』と書き残したこと

中村 沙絵 先生(東京大学 大学院総合文化研究科)

2024年06月21日(金)    16:50-18:35  理学部2号館201号室   

『響応する身体―スリランカの老人施設ヴァディヒティ・ニヴァーサの民族誌』(ナカニシヤ出版、2017年)は発表者の博士論文を基盤にしたモノグラフである。シンハラ語で「ヴァディヒティ・ニヴァーサ(年長者の家屋)」とも呼ばれるこの施設は、様々な理由から家族や親族、その他の既存の関係から離れた人々が、寝食の場を与えられながら、場合によっては死を迎えるまでを過ごす場所である。著者はこうした施設の一つでスタッフ見習いとして働かせてもらい、介護や看取りに携わりながら調査する機会を与えてもらった。本書はその経験をもとに、他者の老病死にかかわることが孕む倫理的契機について考察したものである。
本発表ではその一部、とくに施設で最期を迎えた方々の看取りについて書いた箇所を紹介する。刊行当時はそのようにして書くことが学問的に認められるかわからず、書き残したこともあった。発表の後半では、この書き残したことを振り返った最近の論考をふまえつつ、(発表者にとって)文化人類学のフィールドワークはどのような学びをもたらすものであるかについて考える。

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<今後の予定>
6月 28日 下釜 和也 先生(近藤)
7月 5日 箭内 匡 先生(井原)
  12日 森田 航 先生
  19日  西村 瑠佳 先生(太田) ※今期最終回