第1505回生物科学セミナー
大脳皮質における神経回路の形成機構に関する研究とヒトへの展望
山本亘彦 教授(深圳湾実験室・神経疾病研究所 / 大阪大学大学院生命機能研究科)
2024年08月01日(木) 17:15-18:45 理学部2号館223号室及びZoom
脳の神経回路はゲノムに書き込まれた発生プログラムによって自律的に構築されるだけでなく,感覚に由来する神経細胞の電気的活動によっても変化し得る.そして、この形成過程の異常は精神神経疾患に繋がる.半世紀以上に及ぶ神経科学の研究によって,この回路形成を担う細胞の反応性,それを担う遺伝子やタンパク質の働きは徐々に明らかになってきたが、遺伝子発現調節、細胞挙動、神経細胞間の結合、神経回路の機能と言った各ステップでのメカニズムやステップ間の繋がりには、まだまだ不明な点が多い。また、得られた知見は様々なモデル動物によって得られたものがほとんどであるが、近年ヒトで何が起こっているのかと言う問題に注目が集まっている.これまで,私たちはユニークかつ多様な方法を用いて,齧歯類大脳皮質で軸索成長・分岐形成を担う細胞分子機構,神経活動依存的な分子基盤の一端を明らかにしてきたが、最近になって進化的様相を含めヒト特有のメカニズムを解明するための研究に取り組んでいる。本セミナーでは、それらの研究を通して,神経科学における私たちなりの問題の見方や捉え方,次の一手について紹介したい.
担当: 東京大学大学院理学系研究科・生物科学専攻・脳機能学研究室