人類学演習・談話会

米国における多様な集団のゲノム研究を通じた健康格差の解消

一色 真理子 先生(ヒトゲノム多様性研究室)

2024年06月07日(金)    16:50-18:35  理学部2号館201号室   

多様なバックグラウンドを持つ人々が住む米国では、制度的なレイシズムに起因する、人種間における健康格差が問題となって久しい。ラテン系アメリカ人、黒人系アメリカ人、そしてアメリカ先住民(アラスカ先住民を含む)は、白人系アメリカ人に比べて平均余命が短く、慢性疾患の発生率が高いことが知られる。一方、この10−20年間で、大規模なバイオバンクが数多く設立され、数万人規模のゲノムワイド関連解析(GWAS)が盛んに行われ、ゲノム情報に基づく個別化医療が現実味を帯びてきた。しかし、これらの研究の90%以上がヨーロッパ系祖先集団に基づいており、個別化医療が人種間の健康格差を助長させるのではないかとの懸念も広がっている。こうした背景から、米国においては、ゲノム研究におけるマイノリティ集団へのゲノム医療の恩恵を広げることが非常に重要視されている。本講義では、米国発のバイオバンク「All of Us」に含まれる約25万人のゲノムデータを用いた研究について紹介し、多民族集団の医療ゲノム解析における集団遺伝学の手法や人類学的知見の有用性についても話したい。

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<今後の予定>
6月 14日  Dr. Xiaoxi Liu(大橋)
  21日  中村 沙絵 先生(井原)
  28日 下釜 和也 先生(近藤)
7月 5日 箭内 匡 先生(井原)