東京大学大学院理学系研究科 生物科学専攻
令和7年度 研究室概要
生物科学専攻および関連三学科の沿革、組織、教育と研究の概要
教員一覧、研究室紹介、修了後の進路、建物配置図など
生物科学専攻は、ミクロな分子レベルの共通基盤から生物多様性を重視したマクロな生物科学まで広い分野をカバーし、物理学や化学、情報科学などの関連分野とも連携しながら、分子から生態系までの多様な視点から生命の謎の解明に挑んでいます。以下に示すように、協力講座の基盤生物科学講座には遺伝子実験施設、臨海実験所、植物園本園、分園が含まれ、また本学の附置研究所、他研究科および国立科学博物館等の研究室も参加して有機的な連携を行うことによって、他の大学院組織には類を見ない研究と、学部ならびに大学院の教育を推進しています。
生物科学専攻長の東山哲也です。昨年度は、コロナ禍が明け、各教員の国際活動が本格的に再開されました。コロナ禍において入学・在学した博士課程大学院生に対して専攻独自に設定しておりました学位審査の要件緩和、いわゆるコロナ特例についても、昨年度以降に入学した博士課程大学院生に対しては適用されないことが決まりました。一方で、3つの教授承継ポストを用いました女性限定人事も順次進められており、徐々に専攻の多様性向上が進んでいます。コロナ以降、変化が激しく、先が読みにくくなった国内外の状況において、次世代を育てる確かな教育と、柔軟で機動力の高い専攻の運営が求められています。
さて、ここにお届けしますのは、本学大学院理学系研究科生物科学専攻と、理学系研究科附属植物園、臨海実験所、遺伝子実験施設の、昨年度(2023年度)の教育・研究活動についての年次報告書です。2014年に(旧)生物科学専攻と(旧)生物化学専攻が統合し、(新)生物科学専攻が誕生してから10年が経ちました。両専攻はともに長い歴史をもち、(旧)生物科学専攻の前身である生物学科は、東京大学創設(1877年)と同時に設置されていますから、本専攻は140年以上に渡る長い歴史をもつことになります。昨年度はNHKで「らんまん」が放映されたことで、生物学科や植物園も脚光を浴びました。当時、多くの優れた若手が集まり、教員も学生も皆が新たな学問に没頭し、分類学の発展にとどまらずイチョウとソテツの精子発見という世界的な研究がなされていく熱気が、見事に描かれていたと思います。
現在の生物科学専攻は、ミクロな原子・分子レベルから、細胞・個 体レベル、生物多様性に関するマクロなレベルの生物科学に加えて、生物情報科学、医科学までの、生物科学の広大な研究分野をカバーする大きな組織です。生物科学専攻の基幹講座は、生物学講座、生物化学講座、光計測生命学講座の3講座であり、これに臨海実験所、植物園、遺伝子実験施設をはじめとする協力講座や連携講座の教員、併任教員を加えた約90名の教員が、当専攻を構成しています。いずれの研究分野でも日々、新しい知見が得られており、日本のみならず、世界をリードする研究成果が発信されています。当専攻の大学院の定員は修士課程が84名、博士課程が44名ですが、修士課程修了生の半数近くは博士課程に進学し、大学院修了生はアカデミア、官公庁、民間企業など、さまざまな職種で活躍しています。一方で、1934 年に竣工された理学部2号館は、いよいよ竣工後90年を迎え老朽化が著しく、その建て替えは本学にとって喫緊の課題です。新棟建設を強く大学本部に求めつつも、専攻教職員一同、 自分たちでできる未来に向けた教育・研究の展開や組織改革を目指し、引き続き、努力して参る所存です。2023 年度の私たちの報告書にお目通しいただき、忌憚のないご意見をいただけますと幸いです。何卒、宜しくお願い申し上げます。
生物科学専攻長
東山哲也