1.高浸透圧やグルコース飢餓ストレスによる細胞内反応の一過的な阻害機構



  出芽酵母のタンパク質合成装置やアクチン骨格の基本的な構成遺伝子は植物や動物まで高度に保存されていますが、我々はこれらをダイナミックに制御するような普遍的な機構にはどのようなものがあるのか、という視点で研究をはじめました。その結果、高浸透圧1とグルコース飢餓ストレス2が翻訳開始とアクチン極性化を同時且つ一過的に阻害する事実を発見しました。その後同様なタイミングでMsn2転写因子の核移行やP-Body形成も誘導されることもわかりましたが、(図1)、これは翻訳開始かアクチン極性化のどちらかを優先的に阻害するアミノ酸飢餓、高温、酸化などのストレスとはどうも様子が違います。高浸透圧とグルコース飢餓による一過的阻害現象は阻害と適応の二つの素反応から構成されており、阻害反応の実態は不明ですが、適応反応にはそれぞれの環境ストレスに応じた既存の遺伝子発現系が関与することがわかりました(図2)。この一過的な阻害現象は空間的に配置された遺伝子発現パターンを新たな環境に応じたパターンに効率よく再編成するために重要なシステムと考えられます1,2









参考文献
1) J. Biol. Chem. 277: 13848-13855 (2002)
2) Mol. Biol. Cell 15: 1544-1556 (2004)