管状要素における穿孔形成

<図の解説>
多細胞生物では、細胞の分化はしばしば組織における細胞の位置や隣接する細胞との細胞間相互作用によって制御されると考えられている。水分通道を司る道管は、穿孔と呼ばれる「あな」を持つ軸方向に連続した管状要素(道管・仮道管細胞)で構成されている。道管要素では、穿孔は既に分化を終了した中空の道管要素と、内容物を自己分解した直後の道管要素間の細胞壁にのみ生じる。従って、穿孔の位置は細胞同士の相互作用によって決定される可能性が示唆される。
ヒャクニチソウの単離した葉肉細胞を、単細胞のまま管状要素へと分化させる実験系は、細胞間の相互作用の影響を実質上取り除いた形で、 管状要素の形成を研究する優れた実験系と考えられる。この走査電子顕微鏡写真は、培養96時間目に分裂を経ずに分化を終了した1個の管状要素である。穿孔はこの管状要素の 片側の長軸方向先端の一次細胞壁上にのみ観察される(矢印)。これは、観察した全ての単一管状要素に共通した組織構造学的特徴であった。この結果は、それぞれの管状要素が隣接する細胞の影響を受けずに、単細胞の時点で既に独自の細胞極性持ち、孔を形成するプログラムを持っていることを示唆している。
撮影者:中島仁