東京大学グローバルCOE 生体シグナルを基盤とする統合生命学
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報告書

分子細胞生物学研究所 核内情報研究分野 井上和樹

 今回、グローバルCOEのサポートのもと、UCSF tetrad retreatへの参加および研究室訪問をさせていただくことができましたので、ご報告させていただきます。

 Tetrad retreatは9月10日から12日までLake TahoeにあるGranlibakkenで開催されました。1日目には各PIのレクチャーおよび上級生によるイベントがあり、2日目にはポスター発表があり、私たちも発表の機会をいただきました。リトリートでは、UCSFの学生だけでなく、PIの方々とも接する機会が多く、偶然ランチをご一緒させていただいた先生がわざわざ私のポスター発表を見にきてくださったり、私の研究内容に興味を持っていただき、ラボのセミナーに誘ってくださるPIの方もいて、短い時間でしたが有意義なポスター発表ができました。

 研究室訪問に関してですが、訪問研究室の方の予定等もあり、retreatの開催される前の9月2日から9月9日までの間に研究室訪問を行いました。私はサンフランシスコに向かう前に、Rockefeller大学のRobert Roeder研およびHarvard大学のMyles Brown研、Bruce Spiegelman研を訪問しました。その後サンフランシスコに向かい、UCSFのMission Bay Campusでは、David Pearce研、ホストラボであるHolly Ingraham研を訪問し、翌日、VA Hospitalの Yun-Fai Chris Lau研、Daniel Bickle研を訪問しました。どの研究室のPIの方も、私の拙い英語での説明を熱心に聞いてディスカッションしてくださりました。特に、Chris Lau研では、セミナーをさせていただく時間まで取っていただき、貴重な経験をすることができたと思います。有名な先生方とディスカッションするため緊張していたのですが、どの先生も驚くほど気さくで、研究以外の話もたくさんしていただくことができ、楽しい時間を過ごすことができました。

 研究室訪問で感じた日本とアメリカとの違いは、研究室間の盛んな交流です。アメリカの大学では大学内の研究室だけでなく、近くの大学や研究所もふくめたコラボレーションや研究室交流がとても盛んで、お互いの最新の研究内容や新しい技術を紹介し合う機会が数多くあるようです。このような頻繁な情報交換の場があることが、アメリカの研究の速さの一因ではないかと感じました。

 また、留学している日本人ポスドクの方々にもお話を伺うことができました。アメリカで研究するメリットとしては、英語が身につくと同時に、日本にはないような最先端の技術を身につけることができることだと感じました。日本ではまだ難しい実験技術でもアメリカでは当たり前のように行われていることには驚きました。また、アメリカの大学ではコアファシリティとよばれる共通機器センターのような施設が充実しており、業者に外注しなくてもマイクロアレイや大規模シーケンス、さらにはノックアウトマウスの作製などを行ってくれるため、このような施設をうまく使いこなせば効率よく研究を進めることができます。ただ、言葉の問題などもありアメリカでの生活に慣れるまでは時間がかかるため始めのうちはなかなか研究に集中する時間が取れないことが多いようです。しかしながら、今回お話を伺った日本人ポスドクの方々を見ていると、アメリカでの留学生活を楽しんでいる方々ばかりで、留学をしてみたいという気持ちが強くなりました。

 本プログラムでは、研究室訪問やポスター発表により自分自身と自分の研究内容をアピールする場が数多くあり、将来、留学を考えている人は、この機会が海外での研究する可能性を広げる絶好の機会だと思います。

 最後になりましたが、本プログラムでの海外派遣にご尽力を賜りました多羽田哲也先生、指導教官の加藤茂明先生、また、快く迎えてくださいました研究室の諸先生方に心より感謝を申し上げます。