東京大学グローバルCOE 生体シグナルを基盤とする統合生命学
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報告書

医学系研究科 分子細胞生物学専攻 代謝生理化学分野(栗原研究室)
医学博士課程3年 河村悠美子

 グローバルCOEによるサポートのもと、カリフォルニア大学サンフランシスコ校との交流事業であるTetradリトリートへの参加および研究室訪問の機会に恵まれました。ここに、簡単ではありますが、報告をさせていただきます。

 グランリバッケンにて2泊3日の日程で行われたリトリートは、若手PIや大御所教授陣によるレクチャー、主にポスドクや学生によるポスター発表、夜間のパーティーが3大柱です。レクチャーにおいてはどの先生方も随所にユーモアを挟んで笑いを誘うなど、内輪の勉強会ならではの自由と活気があったと思います。私たちも参加したポスター発表では、質問する場合もされる場合も、対話が進行するに従って、英語を思うように操れないもどかしさと必要性を痛切に感じました。全体を通して印象的だったのは、教授陣自らが率先して参加し、学生と共に楽しんでいる姿でした。例えばレクチャーやポスターの発表にてディスカッションを繰り広げる様子を始めとして、若い学生が中心の賑やかなパーティーに教授がちらほら紛れて踊っているのも目撃しましたし、一日目のレクチャー後に行われた新入生を歓迎するスキットなどの出し物においても学生の乗りに付き合って手を貸している風が見受けられました。

 リトリート後に、私はUCSFの4つの研究室に訪問しました。最初の訪問先はStem cellや心臓の発生で有名なDeepak Srivastava研究室。Deepak研とは所属の研究室との間で親交があり、ホストを引き受けていただきました。研究室の皆さんとも議論する時間を得ることができ、普段から学生や研究員ら間で日常的に研究に関しての活発な意見交換がなされているのだろう、と伺い知れました。

 次に訪問したEric Verdin研究室は自分の研究テーマに関連するところであり、Verdin教授には稚拙ながら自分の研究内容を見ていただき、貴重な御意見を頂戴しました。

 3番目の訪問は、iPS細胞の第一人者である山中先生がGladstoneに持つ研究室。ヒトのES細胞やiPS細胞などを実際に見せていただくことが出来ました。最後の訪問先は、テーマに興味を惹かれて選んだDiana Laird研究室です。4月に立ち上げたばかりの小規模な研究室でしたが、研究をレクチャーしていただき、その的を射たストラテジーに、きっとこれから多くの成果を出されるに違いないと思いました。

 本プログラムの一つの特徴は、例えば自分の興味に沿って訪問研究室を選び、自分でアポイントを取りスケジュール調整を行うなど、滞在日程のアレンジに関して主体性が要求される一方で自由度が高い点ではないでしょうか。それゆえ、参加者個々人それぞれに相応の有意義な経験を得られたと思います。

 何のツテもなく突然アポイントのメールを送ったのにも関わらず、どの先生方も快く承諾を下さったことや、初対面の者が短時間に交流しその上、議論をするということまでも可能にしたのはサイエンスという共通の言語と土台を共に持つからだ、と思うと海の外側の彼らを少し身近な存在に感じることが出来るようになりました。また、世界を視野に入れた場合を含めて、今後研究をしていく上で、自分に不足するもの、自信がもてるもの、本当に目指すもの、譲れないもの、色々と考えさせられました。自分を非日常に置くことで、客観的にみるよい機会になったと思います。

 最後になりましたが、本プログラムの遂行に当たって多大なご尽力を賜りました多羽田先生、派遣を推薦して下さいました指導教官の栗原先生、その他UCSFで快く迎えてくださいました諸先生方に心より感謝を申し上げたいと思います。