東京大学グローバルCOE 生体シグナルを基盤とする統合生命学
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遺伝子制御のファインチューナーであるマイクロRNA(microRNA)の産生抑制機構を解明

(Molecular Cell 44, 424-436, November 4, 2011)

マイクロRNA (microRNA)と呼ばれる小さなRNAは、多彩な生命現象や癌などの疾患で重要な役割をもつ遺伝子発現のファインチューナーです。microRNAはmicroRNAの前駆体がDrosha・Dicerと呼ばれるRNA切断酵素によって切断されることで作られますが、一方で、ユビキチン・プロテアソームシステムのようなタンパク質の分解機構に相当するmicroRNA前駆体・microRNAの抑制機構についてはほとんど分かっていませんでした。宮園研究室の鈴木らは、MCPIP1と呼ばれる新たなRNA切断酵素が、細胞質でmicroRNA前駆体を破壊し、microRNAの産生を負に調節していることを明らかにしました。DicerがmicroRNA前駆体のループ部分とステム部分の境界を規則正しく切断するのに対し、MCPIP1はヘアピン構造のループ部分を不規則に切断することが明らかとなり、このことは、小さなRNAの誕生と破壊を司る2種類のRNA切断酵素群がmicroRNAの産生を巧妙に調節していることを意味しています。また、癌ではさまざまなmicroRNAの機能異常が認められ、Dicerの発現量と癌の予後が関係することが報告されていますが、肺癌の遺伝子発現データを解析した結果、DicerとMCPIP1が拮抗する関係にあることを見出しました。細胞内の小さなRNAの動態を負に制御する機構が同定されたことにより、microRNAと様々な疾患の関係に関する研究、およびこれに基づく診断・治療への応用に向けた研究が進展することが期待されます。

本GCOEプログラム事業推進担当者
医学系研究科分子病理学分野教授 宮園 浩平

Drosha, DicerによるmicroRNA産生機構と、MCPIP1によるその抑制

Drosha, DicerによるmicroRNA産生機構と、MCPIP1によるその抑制