東京大学グローバルCOE 生体シグナルを基盤とする統合生命学
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脳の神経ネットワーク形成のメカニズムを解明

(Cell 114: 1068-1079, 2010)

脳の高次機能は膨大な数の神経細胞ネットワークに基づくと考えられています。しかしながら、脳において神経細胞と神経細胞のシナプス結合がどのような機構で形成されるのかは不明でした。これまでのグルタミン酸受容体GluRδ2欠損マウスの解析からGluRδ2が小脳シナプス形成に重要な役割を果たすことが分かっていましたが、その分子機構は謎に包まれていました。三品研究室の植村らは、シナプス後部のグルタミン酸受容体GluRδ2がシナプス前部のニューレキシンと結合することにより、小脳シナプスの形成を引き起こすことを明らかにしました。GluRδ2とニューレキシンは分泌蛋白質Cbln1を介して連結することも明らかにし、三者複合体によるシナプス後部とシナプス前部との接着という新たなシナプス制御様式であることも明らかにしました。脳の形成発達と機能の鍵を握るシナプスの形成機構が小脳において分子レベルで解明されたことにより、脳のシナプス形成のメカニズム解明が飛躍的に進むことが期待されます。

本GCOEプログラム事業推進担当者
医学系研究科機能生物学専攻教授 三品 昌美

シナプス後部のグルタミン酸受容体GluRδ2が分泌蛋白質Cbln1を介してシナプス前部のニューレキシンと結合することにより、小脳シナプスの形成を引き起こす。

シナプス後部のグルタミン酸受容体GluRδ2が分泌蛋白質Cbln1を介してシナプス前部のニューレキシンと結合することにより、小脳シナプスの形成を引き起こす。