東京大学グローバルCOE 生体シグナルを基盤とする統合生命学
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概日時計発振系におけるCLOCKのリン酸化による機能制御

(Molecular and Cellular Biology, 29(13), 3675-3686(2009))

  哺乳類の概日時計機構の中心的転写因子CLOCKとBMAL1は、E-boxを介して一群の時計遺伝子の転写を正に制御します。一方、負の制御因子群は時刻依存的にCLOCK-BMAL1複合体に結合し、E-boxを介した転写活性化を抑制します。深田研究室の吉種らは、この転写抑制の時刻にCLOCKが過リン酸化され、DNAから解離すると共に分解に導かれることを見出しました。マウス肝臓において、E-box依存的な転写活性化は夜間に抑制されますが、このときCLOCKのリン酸化レベルの亢進が観察されました(図1)。そこで、夜間のマウス肝臓より単離したCLOCKを質量分析に供した結果、リン酸化部位としてSer38、Ser42およびSer427を同定しました(図2)。Ser38とSer42のAsp置換は、核移行を減弱してDNA結合能を阻害し、相加的にCLOCKの転写活性化を抑制しました。興味深いことに、負の制御因子CIPCとの結合ドメインを欠いた変異CLOCKは、リン酸化レベルが著しく減弱し、細胞内蓄積量が増加していました。さらに、培養細胞においてCLOCKのリン酸化レベルを上昇させると、過リン酸化されたCLOCKはプロテアソームを介した分解へと導かれました。以上の結果から、CLOCKのリン酸化は、自身の転写活性化能を減弱するのみならず、自身の分解を促進するという二重の制御を介してCLOCK-BMAL1による転写活性化の抑制に寄与していると考えられました(図3)。

本GCOEプログラム事業推進担当者
理学系研究科生物化学専攻教授 深田 吉孝

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