東京大学グローバルCOE 生体シグナルを基盤とする統合生命学
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柔軟性を予想するサル後頭頂皮質ニューロンの同定

(Neuron 61: 941-951, 2009)

困難な状況に直面したとき、我々はものの見方、考え方を柔軟に変えて対応することができます。こうした柔軟性を生じる大脳メカニズムを検討するため、宮下研究室の神垣らは、2頭のサルに柔軟性を要求するウィスコンシンカード分類課題を遂行させ、後頭頂皮質から単一細胞活動計測をおこないました。この課題は、臨床においてヒトの柔軟性を検査する際によく用いられるテストをサル用に改変したもので、柔軟な行動切替えが要求されます。本研究では、サルがほぼ1回の試行を手掛かりに即座に行動切替えができるよう、訓練することに成功し、行動切替え時に特異的な活動を示すニューロン群を発見しました。これらのニューロンは、一方向の行動切替え時(例えば形選択から色選択)には強い活動を示すが、反対方向の切替え時(例えば色選択から形選択)には活動しないという性質をもっていました。この神経活動はサルが実際に行動をおこす約4秒も前に出現し、この活動をみることで、サルが行動切替えに成功するか失敗するかを予想することが可能でした。これらの結果は、柔軟性メカニズムを細胞レベルで提供する知見といえます。

本GCOEプログラム事業推進担当者
医学系研究科機能生物学専攻教授 宮下 保司

図1.サル用に改変したウィスコンシンカード分類課題

図1.サル用に改変したウィスコンシンカード分類課題

図2.行動切替え時に特異的な反応を示す後頭頂皮質ニューロン活動の例

図2.行動切替え時に特異的な反応を示す後頭頂皮質ニューロン活動の例