東京大学グローバルCOE 生体シグナルを基盤とする統合生命学
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成体脳の海馬において神経細胞は夜間に誕生する

(PLoS ONE 3: e3835, 2008)

近年、幅広い生物種の成体脳において、神経細胞が持続的に生み出されていることが明らかになりました。哺乳類の場合、海馬歯状回および側脳室下帯において、活発な神経細胞の新生が観察されます。私たちは今回、マウス海馬において、神経細胞の新生が昼間に比べて夜間に促進することを発見しました。神経細胞は神経前駆細胞から誕生しますが、詳細な解析の結果、神経前駆細胞の分裂が、夜間に促進することを見出しました。このような日内変動は、側脳室下帯では観察されず、海馬特異的な現象であることが示唆されました。これらの結果から、海馬における神経前駆細胞は、夜間において活発に細胞分裂し、その結果として、神経細胞の新生が夜間に促進すると考えられます。このような神経新生の日内変動は、昼夜のサイクル下で活動リズムを示す多くの動物において、極めて重要な生理的役割を果たしている可能性があります。

本GCOEプログラム事業推進担当者
理学系研究科生物化学専攻教授 深田 吉孝

図

図 海馬における神経前駆細胞の分裂(A)および神経細胞への分化(B)は夜間に促進する。リン酸化ヒストン(PH3)はM期細胞のマーカー。(C)海馬歯状回(DG)に存在する神経前駆細胞は夜間において活発に細胞分裂が進行し、その結果として新生する神経細胞が増加すると考えられる。