東京大学グローバルCOE 生体シグナルを基盤とする統合生命学
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キネシンスーパーファミリーモータータンパク質KIF1AおよびKIF1BβによるRab3を含むシナプス小胞前駆体の軸索輸送の制御機構

(Niwa S., Tanaka Y., Hirokawa N. (2008). KIF1Bβ- and KIF1A-mediated axonal transport of presynaptic regulator Rab3 occurs in a GTP-dependent manner through DENN/MADD. Nature Cell Biology 10, 1269-1279.)

 神経細胞間の情報伝達はシナプス小胞を介して行われます。シナプス小胞の材料は神経細胞の細胞体で合成された後に軸索(時には1m以上にもなります)の末端まで輸送される必要があります。私達は、これまでにKIF1AおよびKIF1Bβというモータータンパク質がシナプス小胞の前駆体を輸送することを明らかにしてきましたが、どうやってKIF1AやKIF1Bβがカーゴであるシナプス小胞の前駆体を認識し結合するのか、そしてどのようにしてそのカーゴを乖離するのかの分子機構は不明でした。

 今回、私達はシナプス小胞に含まれるRab3と呼ばれるタンパク質がKIF1AおよびKIF1Bによって認識されさらに結合が乖離される仕組みを明らかにしました。Rab3にはGTP結合状態とGDP結合状態の二つの状態がありますが、その中でも主にGTP結合状態のRab3がDENN/MADDと呼ばれるタンパク質を介してKIF1AおよびKIF1Bβに結合し軸索の中を輸送されることがわかりました。DENN/MADDにはRab3をGTP状態にする働きがあることが知られています。カーゴの乖離は、Rab3が、GDP状態になることにより起こります。1mにもおよぶ長距離輸送の途中にRab3がモーターからはずれないようにし、またシナプス領域に到達するとカーゴが乖離するためにこの機構が必要だと思われます。

本GCOEプログラム事業推進担当者
総合文化研究科/医学系研究科特任教授 廣川信隆

GTP結合状態のRab3(赤)は軸索に入るが、GDP結合状態のRab3(緑)は軸索の入り口にたまる

図1 GTP結合状態のRab3(赤)は軸索に入るが、GDP結合状態のRab3(緑)は軸索の入り口にたまる

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図2  模式図