東京大学グローバルCOE 生体シグナルを基盤とする統合生命学
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細胞接着分子カドヘリンのお抱え運転手〜小胞体-ゴルジ体間タンパク質輸送の新たなメカニズム〜

(Genes Dev 22: 1244-1256, 2008)

 細胞膜で働くタンパク質は、リボソームで合成後に小胞体に取り込まれ、さらにゴルジ体へと運搬されます。このような“荷物”タンパク質の多くには、小胞体からの離脱を促す特徴的なアミノ酸配列(小胞体輸出シグナル)が備わっています。細胞接着分子カドヘリンは小胞体輸出シグナルを持っていませんが、β-カテニンと結合することにより小胞体から離脱できます。この事実は、従来の小胞体輸出シグナルに依存せず、β-カテニンとの複合体形成を必要とする未知の輸送機構が存在することを示唆しています。私たちは、このカドヘリン輸送機構の中心となるタンパク質PX-RICSを同定することに成功しました。さらに、細胞内輸送に関与するタンパク質GABARAPや、小胞体膜に豊富に含まれるリン脂質フォスファチジルイノシトール-4-リン酸など、PX-RICSと協調してカドヘリン/ β-カテニン複合体の輸送を制御する分子群を明らかにしました。この新たなカドヘリン輸送機構は神経細胞にも存在し、脳の高次機能発現に関連していることを示すデータを得ています。

本GCOEプログラム事業推進担当者
分子細胞生物学研究所教授 秋山 徹

図1

(図1)PX-RICSまたはGABARAPをノックダウンすると、細胞接着部位にあったN-cadherin(緑)が消失し細胞内に蓄積します。その染色パターンがCalnexin(小胞体マーカ; 赤)と一致するので、N-cadherinの蓄積部位は小胞体であることが分かります。青は核を示します。

図2

(図2)PX-RICSの作用機構