東京大学グローバルCOE 生体シグナルを基盤とする統合生命学
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忘れられていた脂肪酸の受容体発見

(Journal of Experimental Medicine, 205,759-766, 2008)

清水研究室では白血球遊走因子であるロイコトリエンB4の二種類の受容体(BLT1, BLT2)を同定し、1997年と2000年にそれぞれNature, およびJ.Exp.Medに発表してきました。BLT1は高親和性受容体で白血球の遊走や活性化と関連し、他方、BLT2は全身臓器に幅広く分布して低親和性のロイコトリエンB4受容体と考えられてきました。動物の臓器の抽出液から、液体カラムクロマトグラフィー・質量分析系を用いて天然リガンドを探索する過程で、シクロオキシゲナーゼの副産物である炭素数17の脂肪酸(12-HHT)が天然リガンドであることを発見しました。本受容体はマスト細胞に発現しており、12-HHT刺激により遊走を引き起こすこと、この反応はnMレンジで起こり、BLT2遺伝子欠損マウス由来のマスト細胞では見られないことも明らかにしました。この結果はJournal of Experimental Medicine4月号(J.Exp.Med. 205,759-766, 2008)に発表いたしました。

本GCOEプログラム事業推進担当者
医学系研究科分子細胞生物学専攻細胞情報学部門教授 清水 孝雄

図1.12-HHTのアラキドン酸からの産生とBLT2を介する作用の概略図

図1.12-HHTのアラキドン酸からの産生とBLT2を介する作用の概略図