東京大学グローバルCOE 生体シグナルを基盤とする統合生命学
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脂質認識G蛋白共役型受容体(GPCR)に近縁なオーファン受容体であるGPR20は恒常的に活性化された状態にある

(Journal of Biological Chemistry, 2008, in press)

GPR20は生理活性脂質を認識するG蛋白共役型受容体(GPCR)に属すものの、未だリガンドが明らかとされていない受容体の1つです。その発現は小腸や大腸といった消化管に高いのですが、生理的な役割については全く明らかにされていませんでした。清水研究室の馳桃子らは、約200種類の生理活性脂質やヌクレオチドといったリガンド候補がこの受容体のアゴニストとなり得るか否かを評価する課程で、こうした候補物質はアゴニストとして働かない一方で、実はGPR20自身がリガンド刺激非依存的に活性化状態にあることを見出しました。GPR20発現HEK293細胞は親株細胞に比べ高い[35S]GTPγS結合活性を示し、且つ基底レベルでのcAMP量が低いことからGi型の3量体G蛋白質を恒常的に活性化していることが示唆されました。内因的に高いGPR20発現を有するPC12h細胞において、このGPR20発現をRNAi法でノックダウンすることにより細胞内cAMPレベルの有意な向上のみならず、細胞増殖の増強が認められ、PC12h細胞においてGPR20はcAMPレベルを恒常的に下げることで細胞増殖を抑制方向に制御することが示唆されました。最近GPR20を含め、恒常的活性化型GPCRが幾つも見出されており、こうした新たな性質のGPCRの生理学的機能が今後は注目されると考えられます。

本GCOEプログラム事業推進担当者
医学系研究科分子細胞生物学専攻細胞情報学部門教授 清水 孝雄

図1.脂質認識GPCRの系統樹。GPR20は赤丸で示す。

図1.脂質認識GPCRの系統樹。GPR20は赤丸で示す。

図2.GPR20の機能図。恒常活性を抑制するインバースアゴニストや活性をより強める内因性アゴニストの存在も予想される。

図2.GPR20の機能図。
恒常活性を抑制するインバースアゴニストや活性をより強める内因性アゴニストの存在も予想される。