東京大学グローバルCOE 生体シグナルを基盤とする統合生命学
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嗅球「におい地図」の領域別機能分化とにおい行動反応

(Nature 450: 503-508, 2007)

脳の嗅球の「におい受容体地図」には、ゾーン構造や領域構造が存在しますが、その機能的意義はこれまで全く不明でした。坂野研究室の小早川らは、嗅上皮背側ゾーンの嗅細胞を除去した変異マウスや、クラスII嗅覚受容体を発現した嗅細胞を除去した変異マウスを作成し、嗅球の軸索投射領域で糸球構造が欠失することを見出しました。また、腐敗物のにおい分子や天敵のにおい分子が活性化する糸球の領域別分布を森研究室と協力して決定するとともに、変異マウスを使ってこれらのにおい分子に対する行動反応の有無を調べました。その結果、嗅球の「背側ゾーンクラスI領域内の特定の糸球群」が「腐敗した食べ物のにおいに対する忌避行動」を担当し、「背側ゾーンクラスII領域内の特定の糸球群」が「天敵のにおいに対する恐怖反応」を担当することを見出しました。嗅球「におい地図」の領域別機能分化の発見により、各領域を起源とする複数の並行した嗅覚情報処理神経経路の存在が予想され、嗅覚中枢神経系の機能ロジックの解明が一気に進むことが期待されます。

本GCOEプログラム事業推進担当者(共同研究)
理学系研究科 生物化学専攻  教授 坂野 仁
医学系研究科 機能生物学専攻 教授 森 憲作

説明図

 

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