公開ラボセミナー

食虫植物における消化酵素の収斂進化

福島 健児 先生(基礎生物学研究所 総合研究大学院大学生命科学研究科)

2015年03月18日(水)    16:00-18:00  理学部 3号館 412号室   

複数の生物種が類似した環境へ適応する場合、機能的には同質だが相同性のない形質が独立に出現することがある。このようなプロセスは収斂進化(convergent evolution)と呼ばれ、鳥類とコウモリにおける飛翔能力の獲得や、サボテン科とトウダイグサ科における乾燥地適応など、生物全般に見られる現象である。被子植物における食虫植物の進化はその典型例であり、5つの目において食虫能力を持たない植物を祖先として独立に出現している。これらの植物は、動物を“食べる”ことで貧栄養環境へと適応しており、どの系統においても獲物の誘引・捕獲・消化・吸収を可能にする新奇形質を備える。演者らは、繰り返し進化の遺伝的基盤を探るため、消化機能に着目して複数系統の食虫植物を対象に研究を進めてきた。その結果、(1)オルソログ関係にあるタンパク質が消化酵素として進化する傾向にあること、(2)独立の系統で収斂的なアミノ酸置換が蓄積していることなどが明らかとなった。発表では、消化酵素の解析から見えてきた遺伝子レベルでの進化的共通性について紹介し、収斂進化を駆動するメカニズムについて議論したい。