第1022回生物科学セミナー

神経幹細胞ニッチの平面細胞極性形成・維持機構

大畑 慎也(カリフォルニア大学サンフランシスコ校)

2015年01月06日(火)    16:40-18:10  理学部2号館 201号室   

上衣細胞は脳室の壁を構成する上皮細胞である。この細胞は、成体神経幹細胞ニッチを形成し、成体神経細胞新生を制御する。また、多数の運動性繊毛を同一方向に運動させることによって、脳脊髄液の流れを作り出す。運動性繊毛の形成や運動の不全は、異常な脳脊髄液の貯留につながり、水頭症を引き起こす。上衣細胞による効率的な脳脊髄液の循環を可能にする分子機構の理解は、水頭症とそれによって引き起こされる一部の痴呆症の早期診断・予防法の確立に必要とされている。本セミナーでは、運動性繊毛の運動方向決定・維持における、アダプタータンパク質 Dishevelled の機能についての最新の知見を紹介する。さらには、脳脊髄液の液体力学が胎仔神経幹細胞の平面細胞極性決定に影響を及ぼす可能性についても議論する。
参考文献
Ohata S, et al. Loss of Dishevelleds disrupts planar polarity in ependymal motile cilia and results in hydrocephalus. Neuron 83: 558-571 (2014)
Ohata S, et al. Mechanosensory genes in neural stem cells are required for the planar polarization of the ventricular epithelium. submitted