第1405回生物科学セミナー

熱帯アジアの植物多様性パターンと新種率

田金秀一郎 特任助教(鹿児島大学総合研究博物館)

2022年11月30日(水)    17:05-18:35  Zoomによるweb講義   

東南アジアの熱帯林は世界の植物多様性のホットスポットのひとつと知られています。一方で、その生態系を構成している植物種については、分類学的研究を行う上で必須となる植物標本は総じて蓄積が乏しく、また研究を担う植物分類学者の数が少ないこともあり、地域の植物相の全容解明には程遠い状況にあります。事実、東南アジアからは毎年400種近くの植物が新種として発見・記載されていますが、未記載種の記載は終わりが見えません。
 演者は、2011年から国内外の研究者と協力し、東南アジア諸国(ミャンマー、タイ、ラオス、ベトナム、カンボジア、マレーシア、インドネシア、ブルネイダルサラーム、フィリピン)にて、ベルトトランセクト法を用いた網羅的な植物相調査を行ってきました。これまでに収集した植物標本やDNA解析用の試料は46,000点を超え、現在はこの標本資料を基に植物の分類学的研究と各地域の植物多様性の評価を進めています。
今回の発表では、東南アジアの特に植物多様性が高い地域はどこか、また各地域の植物相がどの程度解明されているかなど、これまでの網羅的な植物調査を通じて明らかとなった知見についてご紹介いたします。

参考文献
Middleton et al. 2019. Progress on Southeast Asia’s Flora projects. Gardens' Bulletin Singapore 71: 267-319.
Tagane et al. 2020. Fifteen new species of angiosperms from Bidoup-Nui Ba National Park, southern highland of Vietnam. Acta Phytotaxonomica et Geobotanica 71: 201-229.

担当: 東京大学大学院理学系研究科・生物科学専攻・附属植物園