第1372回生物科学セミナー

植物細胞のプラスチド維持に関わる新奇細胞周期チェックポイントの提案

伊藤正樹 教授(金沢大学大学院自然科学研究科)

2022年01月12日(水)    17:05-18:35  理学部2号館講堂   

プラスチドは植物が細胞内共生により獲得したオルガネラであり、光合成をはじめ多くの代謝経路に必須の役割を担っている。共生体であるプラスチドを宿主細胞内に維持し続けるには、細胞分裂とプラスチドの増殖を協調する仕組みが必要であり、長期にわたり植物生理学の重要な課題として認識されてきたが、その仕組みには未解明の部分が多く残されている。核とプラスチドの両方に局在するGRAS型転写因子の発見から、プラスチドの量をモニターして細胞周期を調節する新しいチェックポイントの仕組みを明らかにしつつある。これまでの研究の経緯と新奇チェックポイントに関する仮説、その検証の現状について紹介する。

参考文献
Okumura et al. (2021) MYB3R-mediated active repression of cell cycle and growth under salt stress in Arabidopsis thaliana. J. Plant Res. 134, 261-277.
Kobayashi et al. (2015) Transcriptional repression by MYB3R proteins regulates plant organ growth. EMBO J. 34, 1992-2007.

担当: 東京大学大学院理学系研究科・生物科学専攻・生体制御研究室