第1367回生物科学セミナー

真社会性昆虫:複雑適応系のマクロ生物学

土畑重人 准教授(東京大学大学院総合文化研究科)

2021年10月27日(水)    17:05-18:35  Zoomによるweb講義   

アリやミツバチ,シロアリなどは真社会性昆虫と呼ばれ,バイオマスや生態系での影響力から地球上で最も繁栄している生物の一群とされている.その繁栄の源は,かれらが示す真社会性,すなわち繁殖分業を伴う群れ生活にある.真社会性昆虫のマクロ生物学研究は,不妊ワーカーという究極の利他性が達成された適応的背景,および,個体間の相互作用が複雑適応系とも呼ばれる群れ全体の統合を創発する至近メカニズム,それぞれの探究によって駆動されてきた.両者の接面には,複雑適応系の進化が,その適応性から想定されるようには単純でないという事実が浮かび上がる.セミナーでは,演者の研究例を交えつつその実例を紹介したい.
参考文献
Dobata S, Tsuji K (2013) Public goods dilemma in asexual ant societies. PNAS 110 (40): 16056–16060.
Fujisawa R, Ichinose G, Dobata S (2019) Regulatory mechanism predates the evolution of self-organizing capacity in simulated ant-like robots. Commun. Biol. 2: 25.

担当: 東京大学大学院理学系研究科・附属臨海実験所