第1364回生物科学セミナー

標本・菌株・分子で菌類の生態に迫る

細矢剛 准教授(国立科学博物館植物研究部)

2021年07月07日(水)    17:05-18:35  Zoomによるweb講義   

菌類は昆虫に次ぐ種の多様性を持ち、自然界の様々な場所に生育する。しかし、その本体となる菌糸は、糸状の細胞の連鎖でほとんど形態的情報を持たず、それだけでの同定は困難である。そこで、菌糸から得られる分子情報をもとにした同定が試みられるが、レファレンスとなるデータが圧倒的に不足している。演者は菌類の中でももっとも多様なグループである子嚢菌類(特にその中でももっとも多様なグループであるビョウタケ目)を材料に、標本とそれから得られる培養、培養から得られる遺伝子配列情報を収集し、そのデータをもとに、これらの菌の多様性や生態を研究してきた。本発表では、バーコード領域であるITS-5.8Sシークエンスを中心にした同定の可能性や多様性評価、生態の解明などについて発表する。

参考文献
Hosoya T, Zhao Y, Degawa Y. 2014. Poculum pseudosydowianum, sp. nov. (Rutstoroemiaceae, Ascomycota) from Japan and its endophytic occurrence. Phytotaxa. 175: 216-224
Hosoya T, Jinbo U, Tanney J. 2015. "MolliBase", a new sequence database including unidentified Mollisia and its allied genera. Ascomycete.org. 7: 311-314
Hosoya T. 2021. Systematics, ecology, and application of Helotiales: Recent progress and future perspectives for research with special emphasis activities within Japan. Mycoscience. 62: 1-9

担当: 東京大学大学院理学系研究科・生物科学専攻・植物生態学研究室