第1341生物科学セミナー

ボルネオ熱帯林の多様な姿:標高・土壌条件による変異

相場 慎一郎 教授(北海道大学大学院地球環境科学研究院)

2021年01月20日(水)    17:05-18:35  Zoomによるweb講義   

マレーシア・ブルネイ・インドネシア3か国にまたがるボルネオ島は、世界でもっとも植物多様性が高い場所のひとつである。多様性には1か所での多様性(アルファ多様性)と場所による種の入れ替わりによる多様性(ベータ多様性)という2つの側面があり、ボルネオ島の熱帯雨林はいずれの多様性も極めて高い。ひとくちに熱帯雨林といっても、まず湿地林と非湿地林に分けられ、さらに非湿地林は標高と土壌条件によって異なる森林タイプに分けられ、生育する植物種は大きく異なる。マレーシア領ボルネオ、サバ州には東南アジア最高峰のキナバル山(4095m)があり、高標高域には熱帯山地林という日本の照葉樹林に似た森林が存在する。また、砂質土壌上に成立する熱帯ヒース林や蛇紋岩地の森林など、多様な非湿地林が存在する。山地や特殊土壌上の熱帯雨林ではしばしばマキ科・ナンヨウスギ科の針葉樹が優占し、通常土壌上の熱帯低地林でフタバガキ科広葉樹が優占するのと対照的である。本講演では、このような多様な熱帯雨林の姿について紹介する。

参考文献
相場慎一郎 (2011) キナバル山の熱帯山地林の樹木組成:マレシア区系における位置付け. 生態環境研究 18: 157-168.
相場慎一郎 (2008) 熱帯林樹木の種多様性:異なる空間スケールで見る. In:シリーズ群集生態学5, メタ群集と空間スケール(大串隆之・近藤倫生・野田隆史 編), pp. 1-26, 京都大学学術出版会.
相場慎一郎 (2008) 熱帯林樹木の多様性が続くしくみ. 季刊生命誌, 57. JT生命誌研究館(http://www.brh.co.jp/seimeishi/journal/57/research_11.html)

担当: 東京大学大学院理学系研究科・生物科学専攻・寺島研究室