第1357回生物科学セミナー

日本人基準ゲノム配列JG1の策定

高山 順  講師(東北大学 高等研究機構 未来型医療創成センター)

2020年12月28日(月)    17:05-18:35  Zoomによるweb講義   

国際ヒトゲノム計画により構築されたGRCh37/38などの国際基準ゲノム配列は次世代シークエンシング解析の参照配列として広く利用されています。しかし配列策定に用いられた検体の民族集団の偏りにより、特に我々アジア系集団の解析にとって最適な参照配列にはなっていません。我々はこの問題を解決するため、日本人基準ゲノム配列の策定を企図しました。日本人男性3名から、長鎖リード技術、オプティカルマップ技術等を用いて合計3.5 Tbもの配列データを取得し、検体ごとにデノボアセンブリを行いました。その後3組のゲノムドラフト配列を統合し、3者で異なる配列は多数派を採用しました。これによりこれまで報告された他の民族集団のゲノム配列よりも連続性が高く、正確で、ほとんどの領域で日本人の多数派アリルを採用した日本人の基準ゲノム配列「JG1」の構築に成功しました。構築したJG1を病因バリアントが既知である小児希少難病検体のエクソーム解析に適用したところ、真の病因バリアントを正しく検出し、しかも国際基準ゲノム配列に比較して、候補バリアントの総数が少ないことがわかりました。これらのことは同一集団からの複数ゲノムの統合という戦略が、民族集団固有の基準ゲノム配列策定に有効であることを示します。本発表ではこれらの取り組みとその後の進展につきご紹介致します。

参考文献
Takayama et al., Construction and integration of three de novo Japanese human genome assemblies toward a population-specific reference. Nat. Commun. (in press).

担当: 東京大学大学院理学系研究科・生物科学専攻・飯野研究室