第1350回生物科学セミナー

細胞壁パターン形成 ~植物に見る細胞内秩序の構築機構~

小田 祥久 教授(国立遺伝学研究所遺伝形質研究系)

2020年10月14日(水)    17:05-18:35  Zoomによるweb講義   

細胞内における極性やパターンの構築は生物の発生に欠かせない。植物では個々の細胞が秩序立ったパターンに細胞壁を沈着することにより細胞の形や機能を実現している。私たちは周期的な細胞壁パターンを形成する道管の細胞をモデルとして細胞内における空間パターンの構築機構を研究してきた。その結果、低分子量G タンパク質ROP が細胞膜上で局所的に活性化し、活性化したROP が細胞壁合成のレールとなる微小管を局所的に壊すことにより細胞壁の周期パターンを作り出していることを明らかにした。さらに、このROP の局所的な活性化がタンパク質の拡散性と制御因子間の相互作用により細胞自律的に引き起こされていること、微小管によるROP シグナルの排他な作用が細胞壁パターンの形状を制御していること、ROP がアクチン繊維に作用して細胞壁形成を局所的に促進していることが明らかとなってきた。本セミナーでは道管の細胞壁パターンが作られる仕組みについて最新の知見を紹介したい。

参考文献
1. (総説) Oda and Fukuda (2013) Current Opinion in Plant Biology 16, 743-748
2. (和文総説) 佐々木, 小田 (2018) BSJ-Review-9C, 148-154
3. Sugiyama et al. (2017) Current Biology 27, 2522-2528
4. Sasaki et al. (2017) Plant Cell 29, 3123-3139
5. Nagashima et al. (2018) Scientific Reports 8, 11542
6. Sugiyama and Nagashima et al. (2019) Nature Communications 10, 468
7. Sasaki et al. (2019) Current Biology 29, 4060-4070

担当: 東京大学大学院理学系研究科・生物科学専攻・植物生態学研究室