第1333回生物科学セミナー

細胞集団運動のキラリティとトポロジー

川口 喬吾 チームリーダー(理化学研究所)

2020年10月07日(水)    17:05-18:35  Zoomによるweb講義   

哺乳類の線維芽細胞や筋芽細胞、神経幹細胞などの細長い形をした細胞を培養皿上で増やすと、液晶分子の配列パターンに似たパターンを示す。特に神経幹細胞の場合、細胞密度が高い状況でも自発的な細胞運動がさかんであり、その結果として、トポロジカル欠陥と呼ばれるパターン上の構造の付近で細胞流が生じる[1]。最近われわれは、神経幹細胞集団の運動様式には強い左右非対称性(キラリティ)があり、それによって培養領域の端っこでのみ生じる細胞流があることを見つけた[2]。本講演では、自発運動する細胞とパターンの関係、in vivoの例についての簡単なレビューのあと、細胞のキラリティの定量実験と、スタンプ培養環境を使ったエッジカレントの観察や、それを説明する理論研究についても紹介する。

参考文献
[1] K Kawaguchi, R Kageyama, M Sano, "Topological defects control collective dynamics in neural progenitor cell cultures", Nature 545, 327 (2017).
[2] L Yamauchi, T Hayata, M Uwamichi, T Ozawa, K Kawaguchi, “Chirality-driven edge flow and non-Hermitian topology in active nematic cells” arXiv:2008.10852 (2020).

担当: 東京大学大学院理学系研究科・生物科学専攻・動物発生学研究室