第1336回生物科学セミナー

植物の微小管 〜その不思議な世界の理解に向けて〜

濱田 隆宏 准教授(岡山理科大学理学部生物化学科)

2020年11月25日(水)    17:05-18:35  Zoomによるweb講義   

 植物の微小管は動物・菌類に共通した染色体の分配以外に、細胞質分裂、細胞分裂方向の制御、細胞伸長方向の制御など植物独特な役割を果たしている。また動物細胞の細胞内輸送では微小管が主として輸送を担っているが、植物細胞の細胞内輸送は主にアクチン繊維が働いている。これらの微小管の役割の違いがどのようにして生じているのか、また教科書に載っていない新しい植物微小管の役割があるのではと思い、それらを分子レベルで解き明かすために研究を行っている。
微小管ネットワークの構築や機能発現は、微小管の周辺に集積する微小管付随タンパク質群(MAPs)が働いている。そのため、植物MAPsの機能解析により植物における微小管ネットワークの機能や構築メカニズムを調べることができる。私はシロイヌナズナ培養細胞より精製したMAPs画分を用いて、プロテオーム解析を行った。その結果、1500種類以上のタンパク質を同定した。その中には多くの機能未知タンパク質が含まれており、イメージング解析によるスクリーニングを行うことで6種類の新規MAPsファミリーを同定に成功した。さらに予想外なことにMAPs画分には多くのRNA結合タンパク質やオルガネラタンパク質、代謝酵素などが含まれていた。現在、私はこれらのMAPs画分に含まれていた予想外のタンパク質群を解析し、それらがRNA代謝制御やsmall RNA合成を介した核内クロマチン制御、または細胞間コミュニケーションの制御などを通じて植物の環境応答や発生・分化に関わる可能性を見出している。そこで本セミナーでは植物の微小管が関わる奥深い世界について議論したい。

参考文献
1. Hamada et al. (2013)Plant Physiol. 1804-1816.
2. Hamada et al. (2014)Plant Physiol. 1869-1876.
3. Hamada (2014) Int Rev Cell Mol Biol. 312:1-52.
4. Hamada et al. (2018) J. Cell Sci. 131, jcs216051.

担当: 東京大学大学院理学系研究科・生物科学専攻・発生進化研究室