第1348回生物科学セミナー

ヒトの時間ネズミの時間の解明に向けて – in vitro 体節時計を例に

戎家 美紀 Ph.D.(EMBL Barcelona, Group leader)

2020年07月29日(水)    16:50-18:35  Zoomによるweb講義   

高校生の頃、「ゾウの時間 ネズミの時間(本川達雄著 中公新書)」という本を読み、異なる生物種は異なる時間スケールで生きていると知りました。例えばヒトの妊娠期間は約9か月ですが、マウスは20日、ゾウだと2年近くかかります。では生物種によって時間が違う原因は何なのか、不思議です。この問題はずっと気になっていたのですが、ヒトを含む各種動物の時間を実験室で調べるのは難しく、なかば諦めていました。しかし近年、ES細胞やiPS細胞などの多能性幹細胞を使って、動物の発生過程を模すことが可能になってきました。私達は現在、体節時計と呼ばれる発生過程で起こる振動現象を、ヒトとマウスの幹細胞を使って再現し、なぜヒトの時間の方が遅いのか調べています。

参考文献
Matsuda et al., bioRxiv, 650648; doi: https://doi.org/10.1101/650648 Species-specific oscillation periods of human and mouse segmentation clocks are due to cell autonomous differences in biochemical reaction parameters.
- Matsuda et al., Nature, 580, 124-129 (2020). Recapitulating the human segmentation clock with pluripotent stem cells.

担当: 東京大学大学院理学系研究科・生物科学専攻・動物発生学研究室