第1328回生物科学セミナー

日本周辺海域に出現するカレニア科渦鞭毛藻の形態と系統

岩滝 光儀 准教授(東京大学アジア生物資源環境研究センター)

2020年06月10日(水)    16:50-18:35  zoomによるweb講義   

カレニア科に所属する海産無殻渦鞭毛藻の多くは有害赤潮を形成し,特にKarenia mikimotoiは日本ではこれまでに2番目に,中国では最も大きな漁業被害を引き起こしてきた。主要な3属であるKarenia,Karlodinium,Takayamaに30種以上が記載されてきたが,Karlodiniumなどの小型種は識別が困難であるため日本周辺海域からは正確な出現情報が限られていた。そこで日本やフィリピンなどで細胞を探索し,培養株を用いた形態と系統の比較を進めたところ,未記載種や日本未報告種などの出現が確認されている。また,本科構成種は渦鞭毛藻の中でも特異なハプト藻由来の葉緑体をもつが,ペリディニンタイプの葉緑体をもつカレニア科渦鞭毛藻が初めて発見され,Gertia stigmaticaとして記載した。これら日本周辺海域より得たカレニア科渦鞭毛藻の形態と系統の比較から分かってきた,種同定の現状,系統関係,葉緑体の特徴について報告する。
参考文献
Benico et al. (2019) Phycologia 58:405–418, Benico et al. (submitted) Journal of Phycology, Daugbjerg et al. (2000) Phycologia 39:302–317, de Salas et al. (2003) Journal of Phycology 39:1233–1246, Takahashi et al. (2019) Protist 170:125680.

担当:東京大学大学院理学系研究科・生物科学専攻・多様性起源学研究室(野崎准教授)