第1323回生物科学セミナー

タンパク質を視る、識る、創る -光遺伝学ツールの構造生物学-

加藤 英明 博士(東京大学 大学院総合文化研究科 先進科学研究機構 准教授)

2020年02月13日(木)    16:00-  理学部1号館東棟 380号室   

チャネルロドプシンをはじめとしたイオン輸送型ロドプシンは、光を用いて神経細胞などの膜電位を操作するツール(光遺伝学ツール)として注目を集めている。主にX線結晶構造解析技術の発展により、現在までに様々な陽イオンチャネル型ロドプシン、陰イオンチャネル型ロドプシンの高分解能構造が決定され[1-7]、我々はその精緻な分子機構の構造基盤を一つずつ紐解きつつある。こうして明らかになった構造情報は、その分子機構の理解に役立つばかりか、イオン輸送型ロドプシンの機能改変、すなわち光遺伝学ツールの改良にも大きな貢献をしている。今回のセミナーでは、そうした構造情報を利用したイオン輸送型ロドプシンの改変、または探索法について最新の例を交えながら紹介する[2,5,8]。また時間の許す範囲で、今後の光遺伝学ツール開発の方向性についても議論する[8-10]。

【参考文献】
[1] Kato et. al. Nature (2012) 482, 369-374.
[2] Kato et. al. Nature Communications (2015) 6, 7177.
[3] Volkov et. al. Science (2017), eaan8862.
[4] Kim* and Kato* et. al. Nature (2018) 561, 343-348.
[5] Kato* and Kim* et. al. Nature (2018) 561, 349-354.
[6] Oda et. al. Nature Communications (2018) 9, 3949.
[7] Li et. al. Elife (2019) 8, e41741.
[8] Marshel et. al. Science (2019), eaaw5202.s
[9] Kato et. al. Nature (2019) 572, 80-85.
[10] Jing et. al. Journal of Neurochemistry (2019) 151, 279-288.


構造生命科学研究室 濡木(nureki@bs.s.u-tokyo.ac.jp)