岩崎研公開ラボセミナー

生物形態のデザイン原理:多要素構造、組立順序、組合わせ

鈴木 誉保 博士(農研機構)

2020年01月16日(木)    13:00-  理学部3号館 310号室   

枯葉にそっくりな蝶、精巧な動物の眼など、複雑な構造がどのように設計されているのか、どのように進化してきたのかは、興味深く重要な問題である。これまで、集団内の遺伝子頻度の変化による形質進化、いわゆる小進化、については理解が大きく進んできた。しかし、集団には少数でも存在していない新規の形質(例えば、複雑な構造など)の進化、いわゆる大進化、の理解はほとんど進んでいないのが現状である。
本セミナーでは、複雑な構造が有するデザイン原理として多要素構造を提案する(文献1)。また、新規に複雑な構造が生み出されてきたマクロ進化プロセスを解くための包括的な数理解析手法を紹介する(文献2)。本手法を利用して解明した例として、枯葉擬態の蝶(コノハチョウ)の進化を紹介する(文献3)。題材として、枯葉、岩、樹皮を覆う地衣類、ミュラー擬態、ベーツ擬態など様々な模様をした蝶を用いる。最後に、要素の組合わせ論的な進化について、蝶の性的2型の模様を題材に現在取り組んでいる研究を紹介したい。
文献1: Suzuki, Tomita, Sezutsu (2019) J Molphol 280:149-166.
文献2: Suzuki (2017) J Exp Zool B 328:304-320.
文献3: Suziki, Tomita, Sezutsu (2014) BMC Evol Biol 14:229.