岩崎研公開ラボセミナー

巨大ウイルスの生息地とその微生物生態系への寄与

明石 基洋 博士(東京理科大学)

2020年01月17日(金)    14:00-  理学部3号館 310号室   

巨大ウイルスとは、世界各地で見つかりつつある原生生物へ感染する粒子径が200nm以上のウイルスである。このウイルスは、バクテリアと比肩するゲノムサイズを持ち(数Mbp)、アミノアシルtRNA合成酵素遺伝子を持つなど、他のウイルスにはない興味深い生物学的特徴を有する。しかし、その自然界における分布や生態系における位置付けは未解明である。我々は、海洋中には多くの巨大ウイルスが存在すること、土壌からの巨大ウイルス分離例があることなどを踏まえ、巨大ウイルスは水と陸地が接する水界線(水陸の境界線)沿いに宿主とともに存在するという仮説の下、巨大ウイルスの河川敷の土壌からの分離を試みた。その結果、荒川河川敷で採取した数グラムの土から、日本では未発見であったパンドラウイルス2種とミミウイルスを取得することに成功した。これらのウイルスのアメーバへの感染過程を観察したところ、巨大ウイルスに感染したアメーバ細胞の内容物が、ウイルスの感染後期に細胞外へ排出されることが分かった。この現象は、土壌環境中において集団を形成している宿主へ、ウイルスが効率的に感染を拡大することに寄与することを示唆する。以上から、土壌中に巨大ウイルスが高密度に存在し、それらが拡散した結果として、水環境が陸で増殖した巨大ウイルスのリザーバーとなっていると考えられた。