第1276回生物科学セミナー

相模湾の深海性生物

雨宮 昭南 先生(東京大学名誉教授)

2020年01月28日(火)    16:50-18:35  理学部2号館 講堂   

東京大学の臨海実験所が明治時代、理学部動物学教室の箕作佳吉教授、飯島魁教授らの努力によって、三浦半島南端の三崎に建設されて以後、相模湾のさまざまな深海性生物についての研究が進められるようになった。それらの生物の中でも、魚類としてラブカ、ミツクリザメなどの原始的サメ類や、無脊椎動物としてトリノアシ(有柄ウミユリ類)、フクロウニ、オキナエビス(長者貝)、ガラス海綿などが特に著名である。本セミナーでは、相模湾に産するこれらの深海性生物のうち、初めにフクロウニを取り上げ、その生物学を、主に発生学を中心にして述べる。相模湾のフクロウニのうち、最も浅海に棲むイイジマフクロウニは、飯島魁教授によって最初に発見され、その故に、命名者によって教授に献名されたウニである。飯島魁教授は、三崎臨海実験所の設立にかかわって以後の、彼の研究の後半生を、相模湾の深海に産するカイロードウケツなどのガラス海綿の研究に捧げたが、志半ば病に倒れた。本セミナーの後半部は、ガラス海綿に関する飯島魁教授の研究と、その事績について述べる。

参考文献
1)駒井 卓(1949)動物学上著名な日本産動物 甲文社
2)Yoshiwara, S. (1897) On the two new species of Asthenosoma from the Sea of
Sagami. Annot. Zool. 1: 5-12
3)Amemiya, S. and T. Tsuchiya (1979) Development of the echinoturid sea urchin
 Asthenosoma ijimai. Marine Biol., 52: 93-96.
4)Amemiya, S. and Emlet, R. B. (1992) The development and larval form of an
 echinothurioid echinoid, Asthenosoma ijimai, revisited. Biol. Bull., 182: 15-30.
5)Ijima. I. (1901) Studies on the Hexactinellida. Contribution I.
 (Euplectellidae). The Journal of the College of Science, Imperial University of Tokyo,
 Japan, Vol., XV. (東京帝国大学紀要、理科、第十五冊)pp.1-299.