人類学演習Ⅳ/人類学セミナー4

メダカの多様性研究が拓く人類進化研究

勝村 啓史 先生(北里大学医学部)

2019年12月20日(金)    16:50-18:35  理学部2号館 201号室   

私達ヒトは他の近縁種とは異なり,地球上のあらゆる環境に拡散し,それぞれの地域集団において固有の形質に違いを示す.近年のハイスループットシークエンサーを用いたゲノム多様性解析によって,ヒトの地域差に関わる遺伝子多型が多数報告されている.これまで限られた遺伝情報から立てられてきた仮説や,観察されてきた現象が分子レベルで説明され始めている.しかしながら,それらの相関関係の生物学的解明は未だ十分とは言えず,実際にヒトを用いて,それら遺伝子多型の機能解析や進化的意義を明らかにするのは容易ではない.そこで私たちは,ヒト集団と同様に豊富な地域差を示すメダカをモデルとして,ヒトの地域差に関わる遺伝子多型の探索及び機能推定をする研究を進めている.これまでに,メダカ集団にはヒト集団でみられる遺伝的多型が存在することや,太平洋側に広く生息するメダカはヒト集団史と同様に単一起源を示すことを明らかにし,ヒト地域集団のアナロジーとしてのメダカ地域集団の有効利用を提案してきた.本発表では,ヒト進化の理解を目的とした本アプローチに関連する研究成果紹介に加え,現在取り組んでいる「表現型可塑性による進化の分子基盤解明」と「生息域拡大に関連する冒険遺伝子の探索」についても紹介したい.

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<今後の予定>
 12月 27日 松平 一成 先生