第1316回生物科学セミナー

分子センサーを創り、生きた細胞の活動を測る

筒井 秀和(北陸先端科学技術大学院大学 マテリアルサイエンス系 准教授)

2019年12月11日(水)    14:55-16:40  理学部2号館 講堂   

組織や細胞を「生きたまま」調べる生理学実験は、生物の仕組みを理解しようとする上で最も本質的なア
プローチの一つである。そこではしかしながら、すりつぶす、真空や低温にするなどといった最先端の分析
技術で行うようなことは許されず、さまざまな制約がつきまとう。歴史を 振り返ると、生理学者はいろいろ
な(時には予想外の!)工夫をこらしてこれらの制約をかいくぐってきた。
演者は、生体における未知の情報処理の原理に迫ろうとする上で本質的な、興奮性細胞の集団の電気活動を
詳細に観察する技術の創出を目標に研究を行っている。時間特性が速く空間領域も広いこうした計測は容易
ではなく、現代生理学における重要な挑戦となっている。本セミナーでは、電位感受性を持つ膜蛋白質ドメ
インの特性の解析や、蛍光蛋白質を用いた光学センサーの開発、そして最近取り組んでいる「工夫」である、
分子生物学の知見を融合した次世代の電気生理学技術の構想について紹介する。また、研究の過程で遭遇し
た蛍光蛋白質の予想外な特性についても併せて紹介したい。