人類学演習Ⅳ/人類学セミナー4

ロコモーションの古生物学

犬塚 則久 先生(古脊椎動物研究所)

2019年11月08日(金)    16:50-18:35  理学部2号館 201号室   

 魚は水中を泳ぎ,鳥は空を飛ぶ.動物の概形はその生息地と関わり,そこで摂食するためおもなロコモーション様式に適した形に進化する.このため化石の形からロコモーション様式が推定でき,そこから生体の輪郭を復元することもできる.バシロサウルスはウナギ形の原鯨類なので,oscillationよりはundulationで泳いだはずで,その遊泳法にあう形に尾鰭の復元を改めた.
陸生動物のロコモーションを考える時には足跡化石が手がかりとなる.デスモスチルスは全骨格が復元できたので,手骨や足骨から手掌や足底を復元して足跡化石を想定した.通常は化石の発見後に印跡動物を推定し,行跡の保存がよければ歩容まで推定できる.本例はそのご産出した化石による足印と側方型姿勢の検証である.
モンゴル産の竜脚類の行跡に「内軌道差」が認められ,前肢操舵が判明した.ゾウは最大の陸生動物で肩甲骨や手根骨の関節が独特である.後方交差型 lateral sequenceで歩くゾウと恐竜の軌道の比較により曲がり方の違いが明らかとなり,ゾウの骨の謎が解けた.また,四足歩行動物の曲がり方は体の重心の位置と相関することがわかり,歩容と重心の関係も立証されたといえる.
鳥の羽ばたき飛行の起源はいまだに諸説ある.おもに樹上滑空説と地上走行説の対立だが,ロコモーションが体の重心の移動という考えに基けば,1世紀前の四翼滑空説が正しい.10年ほど前に発見された中国遼寧省ジュラ系産の羽毛恐竜アンキオルニスがその証拠である.
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<今後の予定>
 11月 15日 菊池 泰弘 先生
    22日 澤野 啓一 先生
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