第1310回生物科学セミナー

なぜ動物は眠るのか? 脊椎動物と無脊椎動物の双方からのアプローチ

林 悠(筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)准教授/主任研究者)

2019年11月01日(金)    16:50-18:35  理学部2号館 講堂   

睡眠は身近な現象だが「眠気とは何か?」や「なぜ寝ないと体調が悪くなるのか?」などの素朴な疑問に対する科学的な答えはない。さらに、哺乳類の睡眠は複雑に進化した睡眠構築(レム睡眠とノンレム睡眠から成るサイクル)を有し、夢という独特な意識状態も生成するが、その意義やメカニズムも大きな謎である。私たちはこれまでに、レム睡眠の意義の解明を目指し、マウスを用いた遺伝学的なアプローチをとってきた。マウスの睡眠構築制御を担うニューロンを同定し、レム睡眠を操作できるマウスや、まるで夢を演じるかのようにレム睡眠中に動き出すマウスを作ることに成功した。さらに最近は、線虫での遺伝学的アプローチにより、動物普遍的な睡眠の意義やメカニズムの解明に挑んできた。そこで、睡眠の役割とは何か、生物の進化や疾患などの観点から、これまでの成果について紹介させていただく。

参考文献
Miyazaki et al., Sleep in vertebrate and invertebrate animals, and insights into the function and evolution of sleep. Neuroscience Research 118, 3-12 (2017).

Hayashi et al., Cells of a common developmental origin regulate REM/non-REM sleep and wakefulness in mice. Science 350, 957-961 (2015).