岩崎研公開ラボセミナー

原生生物におけるミトコンドリアゲノムの多様性と進化

西村 祐貴 博士(理化学研究所)

2019年10月01日(火)    13:00-  理学部3号館 310号室   

 ミトコンドリアは真核生物の共通祖先とα-proteobacteriaが共生したことによって誕生した細胞小器官であり、その内部にはバクテリアに由来するミトコンドリアゲノム(mtDNA)が存在する。mtDNAは真核生物の分岐とともにそれぞれの系統ごとに独自に進化したため、ゲノムサイズや構造、遺伝子レパートリー、可動遺伝因子、転写後修飾など様々な面で多様であることが知られている。しかしこれまでに解読された生物の9割以上が動物、陸上植物、菌類などの多細胞生物で占められており、原生生物(単細胞性真核生物)の多様性が網羅されているとは言い難い。そこで発表者はデータの蓄積が少ない、あるいは全く無い系統群に属する原生生物のmtDNAの解読、および他の生物との比較解析を行ってきた。
 本セミナーでは原生生物におけるmtDNAの多様性を概説した後、発表者が行った研究の成果として(1)クリプチスタ生物群におけるゲノム構造と遺伝子レパートリーの比較、(2)真核生物内の複数の生物群で見られるRNA編集システムの分布と進化、という2つのトピックを紹介する。