第1269回生物科学セミナー

光遺伝学的手法を用いた触知覚とその記憶のメカニズムの解明

村山 正宜 チームリーダー(理化学研究所脳神経科学研究センター 触知覚生理学研究チーム)

2019年11月06日(水)    16:50-18:35  理学部2号館 講堂   

脳内における皮膚感覚の知覚(触知覚)メカニズムには未だ不明な点が数多く残っています。例えば、脳内のどの回路が知覚に関連するのか、回路間での情報の流れおよびどの神経活動が知覚の内容を表すのか等はまだ解明されていません。近年、我々は光遺伝学的手法を用いた回路操作により、触知覚に必須な脳回路の同定に成功しています。この回路を選択的に抑制すると、マウスは正確な触知覚が得られません。例えば、ツルツルした床とザラザラした床とを区別できなくなります。また我々は、この回路が睡眠中にも活性化することを発見しています。ノンレム睡眠(深い眠り)中にこの回路を抑制すると、触知覚の記憶が阻害されます。本講演ではこれら知見の概要を紹介するとともに、触知覚のセントラルドグマの解明に向けた取り組みを紹介します。

参考文献
Manita et al., Neuron, 86(5) 1304-1316,2015.
Miyamoto et al., Science, 352(6291) 1315-1318,2016.
Manita et al., Front. Cell. Neurosci., 11:29, 2017.
Miyamoto et al., Front. Neural Circuits, 11:92, 2017.